第3回は、11月9日〜11日に公演を行われる『劇団ACT』さんの稽古場におじゃまげして、代表の林清美さんと、作・演出の三井淳志さんにお話を伺いました。


『おじゃまげ!インタビュー』 第3回 劇団ACT『the Doll〜人形達の集う場所〜』

−まず、劇団名の由来を教えてください

 三井:
 劇団の正式名称は、「Adult Children Theater」の略です。
 結成当初、基本的に私の演出で芝居をやるというところで、自分の考えていることというのが当時の流行語でもある「アダルトチルドレン」的な感覚の芝居。要は時代に取り残されてしまった感覚であったり、忘れていけないものだったりとか、時代の流れに上手く乗れない自分の感覚みたいなものがうまく表現できるパターンが多いと思って。
 それで単純に三井の芝居と言えば「アダルトチルドレン」だろうという感覚があり、じゃあそれをそのまま名前にしようって言うのと、ACT(アクト)、という、PLAYをする人間であるということを合わせてACT(エー・シー・ティー)という名前になりました。

−結成の経緯は?

 三井:
 プロデュースユニットをやっていた頃に、曽根原と一緒にやることが多くなりまして、ちょっと継続的にやりたいなというのがあって。
 それで、やろうかと言ってるときに、最終公演にたまたま見に来てくれたアマンダというニュージーランドの子がいて、彼女が「私は日本語をしゃべれないけど、日本でPLAYがしたい」と言って。それなら一緒にやろうかとなって、そこに市川も加わって、4人でやったのがきっかけです。
 毎回メンバーが違うプロデュースユニットも面白かったんですが、同じ役者を継続的に使っていく中で成長を見たいなというのがあって、じゃあプロデュースユニットではなくて、劇団にしようということでこの形式になりました。

−劇団ACTはどんな劇団ですか?

 林:
 まわりによく言われるのは、「体育会系だね」って。外からそう見えるだけで、そんなに…いや、厳しいけど(笑) そんなに身体を激しく動かせるわけでもなく、ただ、芝居やってるとある程度時間がなくなったりとか、仕事のあとでくたびれてるのに稽古にきたりとか、大変ていうのもあるんだけど、芝居やるのに大変な思いをするのを当たり前だというか、嫌だと思わずに芝居作りに励める人たちです。…たぶん。

−どんなひとたちが集まっていますか?

 三井:
 分かりやすく言うと、この人たちは社会生活ができているのか心配になる人たちで、すごく、リハビリが必要な人たちが多いです。

林:
 (笑)
 どこかダメな子しか、いません。

三井:
 だけど、うちの場合、だめなところを隠さないで生かすことがリアリティーの部分なので、逆にそういうものを『ダメだ』じゃなくてまず自分が『認めよう』という感覚があるんで、そういう人たちが集まってます。

林:
 あと、(三井は)自分じゃ言わないと思うんですけど、三井淳志の芝居がやりたくて、三井淳志の演出の下で芝居をやりたい人が集まってます。

−今回10周年公演を企画した意図は?

林:
 10周年を迎えるに当り、一度皆で会議をしたんです。その時に「10周年だから、気合を入れて3本やりたい」と。
 で、1本目が『天使は瞳を閉じて』。2本目が『信長』。3本目が『the Doll』なんですけど、今までうちは鴻上尚史の芝居をやってきた回数が多くて、うちの芝居っていうのものの形のなかで、ACTテイストな鴻上をやりたいっていうのと…

三井:
 『信長』は最初から決まっていて、それを軸にしようと。
 『the Doll』に関しては、うちのもうひとつの顔というか。陰と陽じゃないですけど、太陽のような芝居というのがどちらかというと『信長』のような、ストーリーを全面に押し出したものなんですが、今回の『the Doll』は、どれだけ自分の内面に入り込めるか、内的宇宙というか、心理的なもの、空間的なものの芝居。初期の頃に、そういうのをメインでやってきたことがあって、そういうのをやりたいというのがあって。
 うちってメンバー全員がなかなか集まれないんです。なので、年1本しか(劇団として)本気の公演が打てないだろうという話をしていて、春しか本気公演はできない、という話だったんですが、今年は3本を本気公演でやろうって。みんな仕事的に無理があっても、頑張って稽古に来て、クオリティの高いものを作ろうっていうことで3本にしました。最近は春だけは全員でフルパワーで。夏秋冬はやれる人でやろうっていう感じだったので、そこも、主要キャストで話し合いをしてそうしようと。

−『信長』を軸にして、今回は「陰」を押し出そうと?

三井:
 太陽の明かりも月明かりも明るいけど、見えてくるものって違うはずで、太陽は人の形をうつすんだけど、月の灯りはその人の心の中を照らし出してくれるっていうか、太陽の光を浴びても癒されないけど、月明かりですごく癒されたりすることもあって、でもどちらも同じ光で、自分を形づくるものっていうのが両方っていう。
だから「陰」だから暗いっていうわけじゃなくて…まあ暗い芝居なんですけど(笑)、内的なことを考えていくことが暗い作業なんですけど、でもそれ自体も決してダークなものではなくて…

−「内なるパワー」?

三井:
 そうそう。だから、そういった意味合いで「陰」と「陽」っていう言い方をしてます。

−今回の芝居の内容と見所を教えて下さい。

三井:
 とりあえず3本やります。オムニバスで。
 1話の『僕だけの人形』という話は、「究極の片思い」がテーマです。

林:
 ラブです。ラブ。

三井:
 これほど男と女ってものは人を愛することができるのか。というか、こんな形の愛もあるのかというようなものの究極な形を見せられればな、と。
 見所は、「小澤祐子の美しさ」。

(一同爆笑)

三井:
 うちではじめて「美人」として扱ったので。

林:
 初だからね。

三井:
 今まではどうしても三のラインしか使ったことがなくて、初めて『美しい』という扱いをしてるので、かなり気合を入れて、どれほど美しくなるかと。
 2話に関しては、原作があるのですが、それをベースに全部書き直しました。ただ、状況設定だけは借りたんだけど、内容は全く変わってしまって、たぶん「こういう意味合いはないよ」って、本人には言われちゃうと思うんですけど。人形になるってなんなのかということを考えたときに、普通の人と人形は何が違うのか、時が動いているのか、止まっているのか、人間が時を止めるときってどんなときなのか、というところから考えていって、果たして人形になることが救われることなのか、というのがテーマで、この話では「どれだけ人形になるか」ということと、人形同士の関係がどう見えるかというのが見せ場かな、と。

林:
 これは、私がやりたくて推したんですけど、中学・高校でよく上演されている題材で、それを大人がやったらどうできるか、というのをやってみたくて。元を知らない人にも楽しんでいただけると思うんですけど、知ってる人にも「ああ…大人」って思ってもらえたら嬉しい。

三井:
 3話が結構難しい芝居なんですよ。今年1月に、兄が妹を殺してバラバラにしてしまったという事件があって、その事件をモチーフにした話です。
 あれをそのまま舞台にしたわけではないんだけど、あのニュースを聞いて、自分も妹がいるし、他人事ではない感じがして。
 昔って、殺人って自分とは全く関係ない話だった。でも、歳月が経って、いつ自分の周りで起きても不思議ではないことになっているなと。そして、たとえば殺人事件が地元であった。というときに、「うちじゃなくて良かった」と思うようになってきた。更に、もうひとつ違う考え方が出てるんじゃないか。というのは「自分が加害者じゃなくて良かった」っていう。
 昔、ナイフ事件を扱ったとき(NEO TRANS)もそうだったんだけど、「なんで自分は加害者じゃなかったのかな」と。当時考えたときは、「殺してやる」と思う瞬間は確かにあったけど、その時にナイフを持っていなかった。だから、今こうして犯罪を犯さずにいるけれども、そうだったらどうだったのかなと思った。
 二人の事件を考えたときに、他人事じゃないなと思って、自分の中でその事件の彼らに近づこうということではなくて、自分の中で芽生えた何かがあって。それで、伝えることをしたいな、あの事件を風化させたくないなと思って、自分の中であの事件で自分が感じたこと、兄と妹ってどういうものなのかとか、というのをすごく出したくて書いた話です。
 あと、主人公の男役をトリプルキャストでやります。3話だけ。それとまだ確定じゃないんですが、ヒロインをダブルキャストにするかを探っているところです。もし実現したら、6ステージ全部違うキャスティングになります。
 私の中で出来た物語なんですが、それを感じ取ってる役者たちが違って、その人たち同士で(兄弟というものに対する)考え方が違うので、6ステージ全部違うものが見えるようにしたいなぁと考えているところです。
 だから、すごく難しい芝居なので、入るとすごく重いというか、難しい芝居なので、そこをどうこなせるかというところでキャスティングがはっきりしていないところなんですけど。

−各話の時間はどれくらい?


三井:
 正確なランタイムはまだ出てないんですが、(全部で)1時間20分くらいになるんじゃないかと。

林:
 20分・40分・20分、くらいです。

−トリプルキャストって面白い試みですね?

林:
 なんか、(三井が)やりたいらしい(笑) へぇーって。「何なの!?」って、わくわくしちゃった。聞いたとき。

三井:
 別にこっちから振ったわけじゃなくて、キャスティングに関してどう思ってる?という話をして。こういう話なので、本当にやるかどうかっていうのは結構難しいところがあって、キャストにとってどう?って言う話をしたときに、最初は私が3話の主役だったんだけど、「その役俺にやらせてもらえませんか」って言ってきたのが二人いて。自分の中のイメージができた、ってことだったので、じゃあやってみようかということで、男のトリプルキャストが決まって。っていう感じですね。無理矢理『やれ』っていうわけじゃなくて。

林:
 あと、うちはピカデリーホールでの公演回数が多いので、今までも客席を(舞台に)上げたり、小さくしたり、雨降らせたり、色んな使い方をしてきたんですが、今回もまた素敵な使い方をするので、是非、見てください。

−芝居の内容としては、静かな芝居というか、内面を覗かせるような…?

三井:
 静かじゃないな。

林:
 静かではないね。

三井:
 下手したら、一番煽るかもしれない。感情ってすごく動くから、それを具現化するので、静かには見れないかも。
 上手くリンクしてくれれば、ドーンと落ちちゃう人もいるかもしれないし、もしそこでちょっと離れた人がいると、その状況を立ち尽くして見てるような感じになるかもしれない。どういうリンクをするのか読めない芝居ではあります。

−稽古を少し見せてもらったんですが、リアリティーを大事にする芝居なんですか?

三井:
 芝居のリアリティーもそうなんだけど、本人のリアリティーが出てこないと意味が無いので。
 普通だと役になって、その役の人のリアリティーなんだけど、今回の芝居って実はそうじゃなくて。その役の中で、本当の自分が思っている普段の感じというリアリティーが出てこないと、全然伝わらないというか、揺さぶられないというか。
 すごくリアリティーは求めているし、私がすごくこだわっているのは、男女間の性的なリアリティーがないと、恋愛は成り立たないだろうなというのがあるので、セックス的なものも隠そうとしないというのが、是非、見たいし、見せてほしいなというところはあるので…引く人は引いていいよと(笑)

(一同爆笑)

−役者さん苦労してるんじゃないですか?

三井:
 大変だよー。精神的にすごくダメージ。

林:
 すごく暗ーくなって帰る日もあり。

三井:
 最初本読みした段階で、みんなどよーんと。(笑)

林:
 なんかね、「やるぞ!」って言う空気にならなくて(笑)どよーんって。

三井:
 でも自分に落ちないと。他人事だと「いいお話」になっちゃうけど。

林:
 落ちてこないとただの他人事で終わっちゃうから、本読んだのと一緒になっちゃう。

−トリプルキャストは発表されるんですか?

三井:
 HP上に載せたり、当日会場でも分かるようになると思います。

−どんな人に見てもらいたいですか?

三井:
 特に感受性の強い10代から20代のひとに見てもらいたいです。

林:
 私は普段特に悩みとか、あまり深く考えていない人に見てほしいかな。「あなたもちょっと考えてみたらどうかしら?」みたいな。

三井:
 あと、『「演劇より映画のほうが面白い」と思ってる人』に見てほしい。

−意気込みを一言お願いします。

林:
 ちょっと暗い感じの芝居ではありますが、必ず皆さんの心の何かをぎゅっとできると思うので、見て、何か悩んでもらえるといいなと思います。

三井:
 松本だけじゃなくて、日本でも、こんな芝居をやろうと思う劇団はないだろうし、こんな芝居をこんな風にできるのはACTだけしかない、というのをきっと見せられると思うので、是非是非見に来てください。
 オリジナルの台本で、オリジナルの演出をするだけじゃなくて、オリジナルの考え方というか。絶対オリジナルだな、っていう。そういうものが観られると思うので。見にきて損はないと思います。

林:
 芝居はちょっと暗いけど、役者はすごく熱いので。是非是非。
 あと、是非30分前においでいただいて、今回も10周年記念第三弾ということで、スペシャル映像をご用意しております。(お芝居の内容とはほぼ関係ありませんが…)

−今後の予定などありましたら教えてください。

林:
 今年が10周年だったので、とりあえず10周年3本を全力で集中してやろう、っていう考えでやっているので、実は何も考えてなくて(苦笑)
 来年猿ロマンさんと「カニイバル・カーニバル」はやりたいね。って話はしてるんですけど。それ以外には何も考えてなくて…でもきっと春公演はやります!


−『まげナビ!』を見ている方々に何か一言お願いします。

林:
 松本を演劇の街として盛り上げたいという気持ちはもちろんうちにもあって、色んな公演がありますが、応援よろしくお願いします。

三井:
 たぶん、松本で一番異端な劇団だと思うので、こういうのもあるんだ、って興味を持っていただけたら嬉しいなと思います。何せ、ジャンルの幅が広い!
 面白いと思ったらなんでもやるので。毎回全然違うものが見れるので是非足を運んでいただきたいです。

林:
 色々やってますので、色々見にきてください。いつもいろんなことに挑戦してます。

−本日はどうもありがとうございました。


劇団ACT webサイト  http://www.geocities.jp/gekidan_act/


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